店長マネジメント研修する上で欠かせない【目的設定】
店長研修を社内で導入する上で抑えるべきポイントについてこれまでに軽く1000回以上店長研修を担当してきた私の視点で紹介します。最後までお読みいただくことで失敗しない店長研修となることをお約束します。
まず店長研修を実施する上で一番大切なのは「実施の目的」です。
当社にも「これまで店長にまともな教育の機会を作ってこなかったので研修の機会を作ろうと思っています」という漠然とした理由で導入を検討する企業からの問い合わせがあります。
店長研修は何のために実施するのか?がもっとも重要
私は早速「なぜ店長研修を実施したいと思われたのですか?」と聞くと沢山理由が出てきます。
・客単価を上げたい
・離職率を下げたい
・スタッフのモチベーションを上げたい
・・・など。
ごめんなさい、欲張りすぎ(でもせっかく導入するならすべて手に入れたいですよね)
他社の店長研修を知らないので、確実なことは言えませんが「全部は難しい」と言われるかもしれません。
ちなみに、上記レベルの要望であれば私は可能です。
例えば、私がよく店長研修をデザインするのは、
です。いかがでしょうか。
研修は点(モチベーションアップだけ)で行うのではなく、全体の設計が欠かせません。当然ながら実施期間は長くなります。それで良いのです。目的は実施することではなく、結果を出すことなのですから。
当社では基本的に年間契約(通常2〜3年)で実施をします。人はそう簡単に変わらないですし、新たな思考・行動習慣を身につけるのには時間がかかります。
上記の私のデザインのようにまずは自社で店長研修を実施する理由について明確にしてみましょう。そして、一つのテーマ(例えば客単価アップ)に特化することで連動して得られるテーマをつなげて設計してみてください。
そうすることで各店舗の店長の納得感も増すことでしょう。ただ、これまで店長研修をやってこなかったからそろそろ研修の機会を作りたい、では店長の理解を得ることは難しいです。
「そんなことをしている暇があるなら現場に出たいです、ただでさえシフトがカツカツなので・・・」と不満が生まれることでしょう。
店長研修実施ニーズで挙がる本社が考える店舗マネジメントの課題
本社の悩み
・来店数に対する成約率が低い
・売上が落ち続けている
・セールでないと売上が立たず利益率が落ちている
・店長が部下に強く言えず無法地帯になっている
・スタッフをうまくマネジメントできていない
・店長の休日出勤がないと営業できない日がでてきている
・店長に憧れるスタッフがおらずアルバイトから正社員登用に繋がらない
・セール商品ばかり売れてプロパーが売れず客単価も落ちている
こういった悩みは少なくありません。
特にアパレル販売は新卒で入社して早々に店長に抜擢されることが多いので、経験が浅い状態で店長になりうまくマネジメントできずに悩んでしまう人が多いです。
店舗(現場)の悩み
では店舗の店長の悩みはどうなのか。
・スタッフにお願いできず自分でタスクをこなすしかない
・セールじゃないとスタッフが売る気になってくれない
・平気でシフト変更を要求してくる、断るなら辞めるとまで言われている
・利益率が低いのはわかっているがどうしたら上がるのかわからない
・スタッフに教えても教え方が悪いのかなかなか一人でできるようにならない
と、スタッフとのコミュニケーションと教育が主な課題になっているようです。
(※ここでは、社内の労務環境・労働条件の不満は割愛しています)
結果的に店長がスタッフマネジメントでうまくいかずに、潰れてしまい離職をしていまい現場は混乱するという状況も起こっています。
こういった相談を受けるたびに思うのですが、店長に伴った基礎教育をせずに店長に就任をさせるというのは料理の作り方がわからないのに料理を作らされることと似ているなといつも思います。
まずは、レシピを提供すること、そしてレシピ通りに作れるのかのトレーニングが必要である、ということです。
店長就任してから迷いながら、不安を抱えながら仕事をするのは辛いものがあります。
定期的な店長の課題解決に則した店長研修やサポートが必要かと思います。
成田式店長研修の特徴とは?
私の店長研修には他社の店長研修と大きな違う点があります。
それは、「実践型」に重きを置いている点です。多くの店長研修は「店長マインド」を中心に教え込みます。悪いわけではないのですが、研修後の実践に繋がりにくく数日もすると学んだ店長マインドよりも既存店舗のスタッフのマインドに引きずられてしまいなかなか定着しません。「良い」と店長研修自体は評価されるのですが、「成果が出ない」という状況に悩まれる人事や総務の研修担当者は少なくありません。
そこで当社への依頼が来る、というのが今の定番パターンですね。
私は、現役の販売員でもありますし、クライアントでも毎月それなりに課題を出して行動に焦点を当てています。
それこそ毎月1冊以上ビジネス書を読んでもらっているのですが、本を読んで感想文を書いて終わり、ではありません。
ビジネス書読書フォーマットというツールがあるのですが、読んで終わりではなく、実践項目を記載する事項があります。
大きな流れとしては、
②課題解決につながる書籍選定
③読書感想(400字程度)
④3つのアイデア実践宣言
⑤実践後10日間のセルフフィードバック
⑥取り組み完了後成果
です。これをフォーマットに落とし込み、クライアント受講生には記入をしてもらい実践管理をしてもらいます。
なぜ、成田式店長研修は実践重視なのか?
私の店長研修がなぜ実践中日なのかというと、店長研修はじめ教育研修(階層別)は、受講後の実践結果のみでしか効果測定ができないと思っているからです。
もちろん教育研修の中には店長に教育の機会を与えてあげたい!という人事総務部の研修ミッションが「実施」というところもあります。結果よりも少しでも研修をきっかけに何かが変わるきっかけになればよい、というスタンスです。
さまざまな企業から問い合わせを頂戴するのですが、私は上記のような曖昧な教育研修の目的では引き受けることはほとんどありません。
理由は、双方にとっての成果が最大化できないからです。
受講生は喜んでくれたが目に見える成果にはつながっていない
【当社受託側】
成果につながる研修がデザインできない(マインドに終始)と次の仕事が得られない
と、このように成果が出ないともしかしたら店長陣から「もう研修はいいや」となるかもしれませんよね。研修受けた直後はテンションも上がっているので「よかったです、がんばります」となるのですが、何を頑張るのか?は明確にないわけです。
だから、数日したら元通りになってしまいます。これでは私(研修提供側)も成果を語ることができなくなります。
「○○社様を担当させていただきました!」とドヤ顔できるかもしれませんが、「それでどんな結果が出たのですか?」という質問には答えることができませんよね。これではプロジェクトは失敗です。
現在私は、紹介と問い合わせで仕事をさせていただいております。
これはコンテンツクオリティとクライアントの実践力の賜物だと思っています。
しかし、結果がでなければ当然ながら紹介は生まれません。これは当社にとっては死活問題です。
だからこそ結果にこだわった教育研修を心がけていますし、全体設計をしています。(課題を出すのもこれが理由です)
店長研修で行うグループワークはどのように進めるのか?
顔馴染みでグループを組むことから始める
グループワークを実施する上で重要なのは、できる限り受講生である店長から積極的に意見が出るように組むことです。
グループ分けも最初のうちは面識のあるエリア別に分けて行うのも良いと思います。そうすることで全く面識のない店長と比べると会話がしやすい環境になります。
徐々に他エリアの店長とも接点が持てるように進めていくようにしましょう。
ずっと同じエリアの店長同士でグループワークをするのはやめた方が良いですね、理由は店長自身の学びや刺激にならないからです。
普段から接している分話しやすいですが、お互いのことをよく知るため意見も想定内で終わることが多いです、店長研修に対する緊張感を和らげるためには初期は同じグループワークにするのが効果的ですが、すぐに他エリアの店長同士でグループを組むようにしてください。
グループワークの目的は実践を重きを置く
続いて、店長研修のグループワークでは何を目的に取り組むのか?についてお話します。
グループワークは基本的に内省と他者の気づきです。
「〇〇店長はどう思いますか?」と聞いて、本人の内省を促し、他の店長の発表を聞いて「たしかに私も同じだな・・・」と気づきを得ます。
普段から他の店舗の店長とは業務面でのやり取りが多いため同じエリアの店長同士でも多くの気づきが得られて効果的です。
そして、次に「行動変容」を目的としたワークに切り替えます。
内省、気づきを無駄にしないためにこれからの店長業務にどう活かすのか、改善するのか?というアイデアが生まれるようにワークを進めていきましょう。
この手法を私は取るようにしています。
他にも、売上アップを目的としたワークをする際にもいきなり「どうしたら売上が上がりますか?」といった投げかけはしません。それよりも「どうして今停滞しているのか?」とマイナスをゼロにするワークをし、その上で「どうしたら売上が今以上に伸びるのか?」とゼロをプラスにするワークを取り入れます。
ぜひこの手順で実施してみてください。ワークのゴールを達成するためにはいきなりなげかけるのではなく、受講生が答えやすいようにクッションを入れながら進めるとスムーズに進むのでおすすめです。
店長研修の資料はどうやってつくればいいの?
店長研修の資料は基本的に2パターンあります。
②研修専用ノートを用意する
ちなみに私の店長研修は後者であることが多いです。なぜなら、資料通りに研修が進むことが少ないからです(笑)
パワーポイントのスライドを作り、投影されたテキストを資料にも転写し穴埋めできるように作っています。A4上部は穴埋め(英語の問題集のようなイメージ)、下部はメモスペースという構成にしています。
もちろん、店長研修をスライド通り進められる方はこの構成で資料を作れば問題ないと思っています。
私みたいに会場の雰囲気や店長研修の残り時間を見ながら構成を再編成するようなことがある方は、②の店長研修専用ノートで良いのかなと思います。
ある程度「売れる店長になるための5つのステップ」というテーマのようなパッケージ化されたコンテンツがある場合は①を選択しても良いかもしれません。あとは、カリキュラム通りに研修を進めていけば良いからです。
私のようにコロコロ話す内容が変わる方は②、研修コンテンツ通り進める方は①を選んでいただけたらと思います。
店長研修のレポートはどう書かせるべきか?
店長研修を進める上で重要ものの一つがレポートです。
店長研修を受けて気づいたこと、学んだこと、実践すると決めたことをまとめることで実践の質が確実に向上します。
一般的にレポートを提出するように!と指示だけをすると提出率が異常に低くなることと提出しても味気ない内容で実践率も低いというレポートでは不十分です。
そこでどのようにレポートを書かせれば良いのか?
①レポートを書く目的を伝える
多くの教育担当者に抜け落ちているのが目的を伝える重要性です。
店長研修自体業務の一環なので書いて当然というスタンスを取りたくなるのですがちょっと待ってください。
本部と店舗の関係性を考えると当然かもしれませんが、時代はどんどんフラットに近づいています。これまでのような主従関係は通用しないと思っておいた方が良いです。
これは店長研修に限らず店長を尊重しレポートを書くことの重要性すら理解してもらえるように丁寧に進めることが大切です。
あなたが実施する店長研修は何が目的で実施するのでしょうか。それを叶えるためにレポートは存在します。ぜひ店長のインプットに対するアウトプットの質を向上させるためにも目的を伝えるようにしましょう。
そのレポートは何のために書くのか?です。
②実践項目のPDCAフォーマットを作る
レポートを書き終わり提出が済んだら終わり・・・ではありません。
レポートで決めた実践項目が成果になるまでフォローが必要です。なぜなら成果が出ればレポート記入する意味が見出せるからです。
レポート書いても意味がない・・・と思われてしまうと提出率も下がってしまいます。目的を伝えることと成果がしっかりと出ればレポート提出に対する自主性が生まれます。
そのため、レポートで明確になった実践項目をプラン(P)として、いつまでに何を実践するのか(D)で管理をして結果が出たのかでなかったのか(CA)を一覧で確認できる簡易的なフォーマットがあると良いでしょう。
③レポートフォーマットもPDCAフォーマットも店長と一緒に作る
よく、「こちらでレポートを用意してもなかなか提出率が上がらないんですよね・・・」という教育担当者がいます。これは、自分達で作ったわけではないのでどうしても他人事になってしまうという傾向があります。
なので、私は店長研修でフォーマットを用意することもありますが、基本的には受講生と一緒に作ります。そうすることで自分ごとになりフォーマットを愛着持って取り組んでくれます。
ぜひレポート作成と運用の参考になれば嬉しいです。
店長向けの研修の適切な頻度と時間は?
私がクライアントに訪問をして店長研修をする際は、基本的に3時間です。
ほぼ店長会議に合わせて店長研修が実施されます。(研修が別日になると移動コストが二倍になるため)
月1回3時間研修、長いところで4時間程度研修をして課題を出してまた翌月に伺うということを繰り返します。
企業の課題や目標の難易度にもよりますが、1〜3年で卒業させていただいています。
社内研修講師を立てる場合は毎年テーマを変えて実施すると良いでしょう。
2年目・・・利益率5%アップ接客販売力アップ研修
3年目・・・口コミで「集まる」お店へ、高評価に繋がるオペレーション研修
と、このように受講生である店長が飽きないようにテーマを変えて実施をすると良いと思います。
また、受講生である店長からいくつか課題を集めて1年間の課題設定にしてもいいかもしれませんね。
いずれにせよ「この研修参加して意味あるの?」とならないように受講生にとって課題解決に繋がる流れをしっかり作っていきましょう。
店長研修のアンケートはどんな内容のアンケートがベストなのか?
アンケートで多くの研修が満足度調査をしています。
この手法が悪いとは全く思っていないのですが、個人の評価なのでどうしても複数人いれば解釈にも違いが生まれて良し悪しは生まれるものだと思っています。
私もアンケートを見て「大変満足・満足・やや不満・不満」とあり不満に○をつけられてしまうと凹みます(笑)もちろん良い気づきとして受け止めて次回以降の研修で修正するようにしています。
話をアンケートに戻しますが、アンケートで最も重要な点は「研修を受けてこれからの1ヶ月何をしますか?」です。
この項目が入っていればどんな構成でも基本OKです。
一般的な当社でのアンケートはこちらの項目です。
・研修の感想
・研修後の実践項目
・今後の研修へのリクエスト
以上です。
成田式研修でも触れましたが、店長研修に限らず研修で重要なのは、あくまでも実践です。
研修を受けて実践して生まれた成果にこそ研修価値があります。
モチベーションが上がった、店長マインドが醸成された・・・と目に見えない結果を評価するのではなく、指標を明確にして取り組むことがとても大切です。
当社では昨対比・口コミ件数(点数)・離職率などを指標に研修を進めています。
明確な成果基準がなければ研修を導入してよかったのか悪かったのかのジャッジができないですよね。
モチベーションやマインド醸成は研修期間が外部講師に頼むと研修契約が終わるとあっというまに元通りになってしまいます。勿体無い・・・と思いませんか?
だからこそ、毎回のアンケートももちろんですが研修内容も行動で完結するように研修自体を組む必要があるのです。
研修期間後も研修ノウハウが定着する唯一の方法とは
店長研修を一定期間実施をして研修コンテンツ(マネジメントノウハウ)を定着させていく上で最も重要なのは間違いなく「成功体験」です。
ノウハウ自体に価値を見出せるかどうか?というのは結果でしかないのです。
店長研修を受講して「あ〜勉強になったな」と思ったとしても実践をしなければすぐに忘れます。
下の表をご覧ください。
この表は時間と共に、どれだけ記憶したことが頭に残っているかを示しています。逆にいえば、どれだけ忘れるかということも分かりますね。
人が何かを学んだ時、
- 20分後には42%忘れる
- 1時間後には56%忘れる
- 9時間後には64%忘れる
- 1日後には67%忘れる
- 2日後には72%忘れる
- 6日後には75%忘れる
- 31日後には79%忘れる
ということが分かります。
このようにほとんどの情報は数時間で半分以上忘れてしまいます。
だからどの研修でも耳にタコができるくらい聞いていると思いますが、メモを取るべきだし、復習も欠かさないことがポイントなのです。
そして、私はこのメモと復習に付け加えてお伝えしたいのが、「成功体験」です。
インプットした情報はアウトプットして初めて完結します。記憶に定着させるためにはなんといっても実践する、これに尽きるのです。
(勉強も同じですよね、学んだことは誰かに教えることで定着すると言います。)
以上です。
店長研修を導入するあなたへ
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
今回は、店長研修を実施する上で大切なことをまとめてみたのですが、いかがでしたでしょうか。
内容に共感してくださったり、勉強になったな!と思ったらぜひSNSで紹介していただけると嬉しいです。
また、こんなことを教えて欲しい!店長研修を実施する上でこんな悩みがある!などありましたらぜひ教えてください。
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またこの記事もリライトして価値の高い導入ノウハウにしていきたいと思っています。
ジャパンブルーコンサルティング
成田直人
追伸
他にも店長研修について知りたい!という方は、ぜひこちらのHPも合わせてご覧ください。