店舗での顧客体験を設計する上で欠かせない二つの思考
人間は二つの思考を持っています。1つは、短絡的な思考と2つ目はじっくり考え込む長考の思考の二つです。短絡と長考の思考パターンを人間は持っています。
例えばあなたがコンビニに入ったとします。
短絡的な思考は「おっ今日はエビスビールにしようかな〜」と思ってさっとビールを取るということです。
長考の思考とは「エビス・・・いや今日はプレモルもいいな」とビールの選択肢が多すぎて悩んでしまい「ハイボールもあるのかぁ・・・どれがいいかなぁ」とさらにビール以外の選択肢も考えてしまい決めきれないパターンです。
※詳しくはダニエルカーネマンのシステム1・システム2を勉強していただくと理解が深まるのでおすすめです。
そして、私が店づくりをする上で圧倒的に大切にしているのは極力、顧客が長考モードにならないようにすることです。
自然と商品やサービスを疑いなくカゴに入れる、大型商品であれば店員を呼んで購入をする、という状態に持ち込みます。
人は一度考え出すと購入しない方向に思考が働きます。一度考え出すと「もっと安く買えるのではないか?」「もっと他に良い商品があるのではないか?」と先送りされるリスクが高まります。なので基本的には即決(短絡的思考)してもらえるようにデザインを組みます。
だから私は売場作りをするときは「極力お客様を悩ませないように選択肢を限定しよう」と伝えているのです。選択肢が多すぎると何がいいのかわからなくなり脳疲労が起こる(長考モード)のでおすすめしません。
以前自宅近くの商業施設でカレーのレトルトが100種類以上ならぶ店を見つけました。店に入ってどれにしようかと考えましたが結局買いませんでした。「これいいなぁ・・・」と思ったら1秒後には「こっちもいいな」と永遠にみ続けるのです。何かを意思決定する前頭葉が疲労してしまい「もういいや・・・」と拒絶モードになり店を出たのです。
「おいしくなかったらどうしよう」
「こっちにすればよかったと思ったらやだな」
と、長考の思考では不安や恐怖が生まれやすいです、結果購買を先送りするわけです。
これは私だけではなく店を出た後店内を見ていましたが、買った人はいませんでした。おそらく私と同じように長考モードで脳疲労を起こし先送りしたのだと思います。
店舗での顧客体験で欠かせない「各カテゴリーでおすすめは1つ」の法則
店内で各カテゴリー(日用品・DIY・ペットなど)で販売促進をする時に、「初めてのわんちゃんねこちゃんコーナー」を展開しようと決めたとします。
何を展示しようかなぁとあれもこれも置くのはダメです。はっきり言って売れません。
この時に、ゲージは1種類、ペットフードも1種類と必ず他の選択肢を与えないことが大切です。なぜなら、数種類それぞれ置いてしまうと長考モードに入るからです。そうなると買い物に疲れてしまうので、コーナーにして各カテゴリーの商品を数種類置くのではなく、「初めてのわんちゃんねこちゃんコーナーセット」にするのです。そしてワンプライス!9800円で勝負する、というのがポイントです。
初めてわんちゃんねこちゃんを飼う時に、コーナーを作って、選択肢豊富に展示したらどれを選んだらいいかわからないので、最低限必要なものだけを選んで買います。なぜなら先にあげたように選択肢が多すぎて「ゲージとペットフードとトイレマットだけでいいかな。また今度買いにこよう」と先送りします。
敢えてセットにすることで「これで全部揃ってるのね、よしこれにしよう」と全商品買ってくれます、怠惰な脳の仕組みを活用した売り方です。意思決定は一瞬です。このように短絡的モードの状態で購入を後押しできるとあれこれ考えずに済むので客単価も上がるし、満足度も高いです。後で二度手間三度手間になると満足度下がるし、面倒だからとネットショップで買われてしまうリスクもありますよね。
できる限り店舗で商品やサービスを購入してもらうためにも①短絡的な思考(システム1)と②長考の思考(システム2)があることを知り、売場づくりもできる限り前頭葉が疲労しないように組むことが大切です。