接客販売は個人のスキルだけが売上に反映されるわけではない
私の仕事はセールススキルアップを目的とした研修をしています。
起業当初はまさにこの研修のみで仕事をしていたのですが、経験が浅い起業当初に大きな壁にぶつかりました。それは、会社から研修を受けるように命じるので受講生によってモチベーションもセールススキルもバラバラで誰を対象に研修をすれば良いのかわかりませんでした。(考えれば考えるほど迷走し満足した結果を出すことができませんでした)
同じ研修をしていても数字がすぐに伸びる人もいれば残念ながら研修を受けても意味がないと言われて参加しなくなった受講生もいました。
もちろん私の力不足の結果なのですがなんとかしなければ・・・と考えた結果、私のセールススキル研修の技術を磨くのはもちろんなのですが、セールススキルに関係なく売れるセールス設計をしようと決めてクライアントに提案しました。私がセールスデザインと呼んでいる顧客も販売員もストレスなく最高の結果を作り出す仕組みです。起業して3年目から取組み始めたのでもう12年になります。
セールスの仕組みってどんなものなのか?
簡単にいうと、お客様に断られず気持ちよく提案を受け入れてくれる仕組みです。私も含め多くの人は自分から商品の提案をしたりクロージングをするのは嫌です。
なぜなら断られて傷つくからです。中には図太い神経の持ち主で断られてもへっちゃらという人もいますが、多くの人は数回断られてしまうともう自分から提案をするのは嫌になってしまいますよね。(私もそうです)
だから、お互いがストレスのないセールスを設計してその設計通りにトークをしていただければお客様に嫌がられることも断られることもない状態を作ることを目指しました。
何より私がABCマート・PCデポ時代にほとんどクロージングせずに商品やサービスを販売していたので単純に得意分野だったのが功を奏しデザインは比較的簡単に仕上がり結果に繋がりました。(正直このサービスだけで15年間勝負できたんじゃないかと思うほどです)
このベースとなるセールスの流れを覚えて、セールスに欠かせない例え話だったり当人の過去の経験談を用いたりとベースを守れば自由にセールスに盛り込んでいただいてOKとガチガチに固めずに余白を作っています。
最近私がデザインしたセールスは、お客様にある質問をしてもらいます。そして、回答は3パターンに分かれます。
Bパターン→緑のクリアファイル
Cパターン→赤のクリアファイル
と3つあります。
お客様がAと回答したら販売員(営業)は青のクリアファイルを取り出して所定のアンケート用紙にそって質問をしていきます。するとお客様の願望はどんどん明確になります。この時点で顕在ニーズだけでなく潜在ニーズも引き出されている状態を作ります。
そして、アンケート用紙の次に事例集が登場です。
実はお客様のような方々は当社のサービスと出会いこのようなお声を頂戴しています。
と、こんな風にセールスが進んでいくのですが全体の流れは基本マニュアルのように管理しています。
どのお客様にも同じセールスをするというマニュアルではなく、お客様を3〜5パターンに分類をしてそれぞれのお客様に応じたアンケート用紙や事例集があるのである程度ニーズ別にカスタマイズされたセールスとなります。
仕組みは月1回改善会議をしてブラッシュアップをする
セールスデザインは月1回の改善を施します。なぜならニーズ変化が激しいからです。
一昔前のように決まった話を決まった手順ですれば売れるわけではないので、事例を最新事例に変えたり、成功事例のトーク集から新たに全体のデザインに盛り込んだり、逆にセールスプロセスの一部分を削除したりと工夫をします。
そうすることで常に成果に繋がるセールスデザインとなります。
仕組みを作る上で重視しているキーワードとは?
私がクライアントのセールスデザインの草案を作る際にいつも大切にしていることは、
②潜在ニーズを発掘する
③同意が生まれる
④顧客の選択を疑う
です。
全部紹介すると膨大な量になってしまうので、ここでは簡略して紹介します。
まずコミュニケーションのキャッチボールではお互いにストレスなく会話が続くことを重要視しています。無理が働くと成約率は下がるので、できる限り自然に話をするだけでお客様の欲しいを引き出すよう設計します。
そこで顧客の話に共感する、セールスの話に同意してもらう、この二点がポイントです。
「これまで大変でしたね・・・」と共感し、
「なんとかしたいですよね・・・」と同意を得る
先に共感をしてからこちらの主張を受け入れてもらうのが基本パターンです。
「ちなみにこんなことでも悩んでいませんか?」と潜在ニーズを引き出す質問をして「たしかに言われてみれば・・・」となります。
これでニーズは顕在化しました。満たしたいニーズが広がると顧客は自分の欲しいと思っていた商品に疑問を感じ始めます。「これでいいのかな・・・」と。そこで、すかさず「お客様の話を伺っていると、A商品を選択されていますが私はB商品がいいかなと思います。なぜなら・・・」と展開するのが顧客の選択肢を疑ったセールスです。
この流れでイメージできましたでしょうか。
本当はもっと複雑なのですがここでは限界があるのでこの辺にしますが、潜在ニーズをスムーズに引き出すために情報(健在ニーズ・悩み・不満・不安など)が必要です。
とはいえいきなり初対面の人に「私こんなことで悩んでいて・・・」って言わないじゃないですか。
だから、共感を中心としたコミュニケーションを取り入れていくことが重要なのです。
共感で信頼関係を築きながら主導権を握るために同意を差し込んでいきます。
この同意の難易度もいきない高いものから入れるのではなく同意しやすいネタから差し込んでいきます。
そして、最後に一番難易度の高い同意、そうだな例えば「お客様が最初に選んだ商品はもう選択肢にないですよね?」という直球の質問です。いきなり言われたら頭にくるけど、適切な会話を重ねれば「いや〜話をしていて完全にそうですね・・・」となります。
心理学で顧客の思考を表面的にコントールするわけではなく、お客様に完全に憑依して顧客の立場を完全に理解し切ることでこのセールス手法は機能します。
心理をコントロールする手法ではなく、コミュニケーションの中心は真心です。これを上手に設計していきます。
と、今日はちょっとマニアックな話だったので難しかったかもしれませんが、ご自身の店舗や営業の販売力が課題だとしたらトーク設計を見直してみると良いと思います。
セールスは、お分かりの通り商品提案のタイミング(取り返しがつかない)がすべてなので、そこにいたるプロセスに不足がないように設計していきましょう。