人材の成長が先か、企業の成長が先か、後者は成功しない
売上と利益を最優先にビジネスを組んでしまうと大変なことになります。
これは当社に相談に来てくださった経営者から話を伺ったのですが、経営状況がよかったのにここ3年くらいで一気に悪化したというではありませんか。(ちなみにコロナ前の話です)
新卒採用も初めて従業員が増えたことを理由に新店を出して攻めていたのに全然売上が上がらなくて困っている、しかも新卒も全員辞めたと聞きました。
5店舗くらいの店舗事業あるあるです。
こんな悲惨な状況を誰も予測できなかったのかと話を聞いていて違和感しかありませんでした。勢いって怖いですね。挑戦と無謀は違います。
もし自分が働いていても「辞めるわ」と素直に思ったのは企業成長を優先した店舗出店だったからです。
基本的に店舗経営者のレベル以上の店舗を構えることはお勧めしません。
まずその基準となるのは根拠のない自信です。2、3店舗うまくいったから次もうまくいく、という謎の自信。たいていこういう経営者はふわふわとうわついています(笑)
もちろんうまくいく人もいるでしょう。なぜなら、企業が成長するに応じて経営者も成長するからです。さらに、初期の段階から展開しても耐えうる強度がビジネスモデルにある場合もあります。
ただすべての経営者がこうなるとは限らない、むしろ少ないというのが私の実感です。
店舗経営者にも店舗ビジネスにも器があるなと思うのですが、あなたはどう考えていますか?
話が一瞬それるのですが、出店の理由が「周りの経営者もどんどん出店しているから私も出店したい」という言葉にいつも引っ掛かりを感じます。
これはこの打ち合わせで何度かこの店舗経営者が言っていました。
「誰の会社?なぜ誰かと比べないといけない?」そう思いませんか?
小売・サービス・飲食業それぞれの経営者団体や勉強グループに所属することは結構なことですし成長意欲はとっても素晴らしいと思います。
しかし、そこで受けた刺激が出店攻勢に転じるのはちょっと違うかなと思います(気を悪くされた方はここまでで閉じた方が良いかと)
出店条件は、従業員が育つ・仕組みがさらにブラッシュアップしてからがおすすめ
走り出してからは取り返しがつきません。
この経営者も出店した以上は潰したくない・・・と。そりゃそうだ。私もその意見には賛成です。
だからやるしかないし私もできる限りのサポートがしたいと思って話をしました。
これは経営判断なので否定のしようがありませんが、会社を存続させることを最優先に考えた意思決定をするべきとアドバイスをしました。
それは今回の事案に関しては撤退です。理由はここで話すと超長くなるので割愛しますが、
・スタッフ採用もスタッフ異動も距離上厳しい
・仕組みも教育も不備が多い
・まだ借り入れと資金に若干の余裕がある
・既存店の一部も赤字店舗がある(5店舗以下の経営で赤字店舗があるってマジでやばい)
とこのような理由で店舗を売却することをお勧めしました。
結果店舗を売却して(初期投資分の7割は回収できた)、今は仕組み・採用・教育をブラッシュアップしています。
おそらく今年の10月に新規出店する予定です、もちろんドミナントで。
やはり店舗経営者は出店戦略を勢いに任せてしまうところがあります。儲かりだすと出店したくなる気持ちはわかるのですが、2、3店舗でなんとかなる仕組みと5店舗超えた途端にこれまでのやり方が機能しなくなるという現象に出くわして対応できなくなり撤退せざるを得なくなります。
こういう経営者は最初から5店舗・10店舗出店してもいけるように強度のある仕組みや教育の仕組みを作らなければいけません。
出店した以上は地域に愛される店をみんな作りたいって思うはずなのですが、「お客様に喜んでもらいたい」という姿勢から「もっと店舗を拡大したい」というあり方が変わる経営者が多いような気がします(成田調べ)。
野心があることは素晴らしいし、私も応援したいのですが、出店してうまくいく強度が足りないから失敗するんだなといつも学ばせてもらっています。
やはり器は途中で大きく変えようとするとしんどいので事業を設計する段階からある程度強度のあるビジネスモデルを作ってからスタートすることが大切です。
なので、この経営者には今のブランドは今の規模で守って、新ブランドを店舗展開できるパッケージにしていきましょう!とアドバイスしました。
楽しみですね、これからどう展開していくのか。